最近私の所にもスパムコメントが投稿され、少々困っているのですが、このスパムコメントのことを語ってみたいと思います。でもまずはちょっと遠回りして、動物のことを書きます。
(本文があまりに長くなったので、末尾に要約を加えました。そちらだけでも読んで頂けると幸いです)
海棲ほ乳類のこと
動物園で見るイルカやアシカなどの海棲ほ乳類は、水の中をくるくるくるくる泳ぎ回っています。相当の運動量のように見えます。人間であんな風に泳いでいる人がいたら「何を考えているの?」とちょっと変な風に思ってしまいますよね。ではなぜ彼らはあんなに止めどもなく泳いでいるのか?
ほ乳類というのは体温をある程度の高温に保っておく必要があります。水というのは冷たいですから、彼ら海棲ほ乳類は、じっとしているだけでも体温維持のためにエネルギーを使うのは想像がつきます。
また移動に関して考えると、例えば人間の場合は地面から直立して体を支えて重心を動かしながらえっちら前に進むのだが、彼ら海棲ほ乳類の場合には浮力がありますから、体を支えるという必要がほとんどない。つまり前進することだけにエネルギーを注げばいいことになります。
また人間が進む場合は地面(力点)を下にして、足を曲げたり伸ばしたりとやや特殊な動きをする必要があるのですが、彼らの場合は回り中に水(力点)があり、体をくねらしながら全身で水をかくことができる。従って、彼らは移動するエネルギーが我々よりも遙かに少なくて済む。
つまり、ここまでで海棲ほ乳類はじっとしていてもエネルギーを使い、移動していてもエネルギーをあまり使わないということが分かる。ふつう人間の場合、疲れるから理由がなければ動かないけど、この常識が通じないのです。
これに加えて考えれば、動き回っていればたまたま餌を見つけることもあるだろうし、(検証は難しいですが)生き物としては止まっているよりも動いている方が得のはずです。
こうなると海棲ほ乳類の場合は止まっていると損で、とりあえず移動しとけという結論になります。
実際、エネルギーの面で調査を行った学者がいるようで、海棲ほ乳類が止まっているときと軽い速さで動いているときでは、ほとんどエネルギー使用量が変わらないという結果が出ているようです。
スパムのこと
さて、動物の話が長くなってしまいましたが、これに対してスパムについてです。
インターネットの発達により、通信するために必要なコストは激減しました。場合によってはほとんど0と見なせます。
そして、スパムメールやスパムコメントを送るような業者は、オンラインカジノやアダルトサイトやほとんど詐欺まがいの儲け話など、普通の人はあまり見たがらない物が多いです。しかしそのような広告を見て、ちょっと見てみる人が中にはいることも事実です。そしてそのような人が少しでもいれば、業者にとって儲けになるのです。
こうなると、海棲ほ乳類がくるくると泳ぎ回っているのと同じような理由で、上記のような業者はスパムを出さない方が不思議ということになります。スパムを出しまくっていてもたいしてお金はかからないし、お客さんはやってくるのです。こうして、(政治力学という言葉がありますが)経済力学的な考えると、いかがわしい業者がスパムを出すのは必然という結論になります。
おしまいに
ではスパム業者を許せといっているのか?そうではありません、すでに検討は始まっていますが、法律や技術的な面で改善を行い、刑罰、罰金、技術的なブロックなどで、スパムを送ることのコストを上げる必要があるということです。
ただし一番の問題は、どこからがスパムでどこからが正常なメールやコメントなのかを区別することです。実際私は、よく送られてくる、こちらの記事に何の言及もない一方的なトラックバックはほとんどスパムだと思っています。でもたまには読みに行って面白いと思うこともあるし、実害も少ないのでスパムだと言い切れるかどうか微妙なところです。
インターネットという画期的なものができてしまった以上、スパムとの戦いは今後も続いていくことでしょう。
では、長文を読んで頂きありがとうございました。
なお、本記事は以前書いた記事「イルカがやたら泳ぎ回る理由」をちょっと拡張したものです。また上記の海棲ほ乳類の話は、以前も紹介したゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学から知りました。
[2004.8.14追記]
長くなってしまったので、要約を追加してみます。えー、なんだか本文と表現が違う要約になってしまいました(^^; 最初からこんな記事でも良かったかも。。。
<記事の要約>
動物園等で見る海棲ほ乳類はやたらに泳ぎ回っている。海棲ほ乳類はじっとしているときと泳ぎ回っているときのエネルギー効率がほとんど変わらない。泳ぎ回っていれば餌を見つけるなどの利点が少しはある。だから彼らは泳ぎ回る。
インターネットでは通信コストがほとんど0だ。スパムを見て業者のサイトにアクセスする人はほとんどいないと思うが、少しは存在する。だからそのような業者はスパムを送り続ける。
どちらも、必然だ。
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